過去を覚え、未来を展望する

今年、ドイツのアウグスブルクで行われたメノナイト世界会議の執行委員会で、メンバーとともに旧市街を歩き、再洗礼派のことを学ぶ機会がありました。私たちが立ち寄った大きな家では、1528年のイースターの朝に、不法な会合をしていた88人もの再洗礼派が見つかったそうです。イースターの聖日に逮捕された人々は、追放されたり、拷問されたり、処刑されたりしました。

「今はもう迫害されなくなってよかった」とメンバーの1人がいうと、すぐさまエチオピアの委員が手をあげて「今もある迫害のことを教えてあげようか」といいました。世界の南側では、アナバプテストの教会が迫害に苦しみ、たたかいながら成長しているところもあります。アウグスブルクで過去を「ともに」覚える経験ができたことは、多様なアナバプテストの人々が理解し合う助けとなりました。

MWCがアナバプティズムの500周年を祝うことはふさわしくないのではないか、という人もいます。埃をかぶった歴史を掘り返して、大昔に教会を指導したヨーロッパ人男性を賞賛するのか、と。そうではありません。ヨーロッパの再洗礼派の源流をたどることは、私たちが地球規模で話し合い、学んだことをこんにちの教会の経験と結びつけ続けていくなら、有意義なものになるでしょう。

アウグスブルクで2月に開かれたMWCのリニューアル2027の催しでは、五大陸を代表するアナバプテストの若者が、大宣教命令をどのように自分の文脈で実践しているかを報告する機会もありました(今号の「視点」を参照)。イベント全体を通して強調されたのは、歴史を美化するのではなく、神の民が今もこれからもあずかる宣教の重要性です。2018年のリニューアル2027はケニアで行われ、アフリカのアナバプテストの物語に焦点があてられます。

歴史上由緒ある場所や出来事を覚えることには、偶像崇拝の危険が伴います。ちょうど、他教派のイコンが偶像崇拝の危険と無縁でないように。しかし、イコンはまた神を展望する窓にもなり得ます。同様に、再洗礼派の教会史に登場する英雄たちの物語は、聖霊がこんにちの教会に告げることを理解する窓にもなり得るのです。

—ネルソン・クレイビルはMWC会長(2015〜2021年)。米国インディアナ州在住。

日本語 (Japanese Courier)

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